国際21世紀懇話会(Global Forum for Twenty-first Century) 設立のお知らせ

昨年2015年は第二次大戦終結70年の節目の年であり、21世紀もすでに15年を経過しました。この間、しばしば第三次世界大戦勃発の危機が危惧されながらも、世界は何とか国と国との全面的紛争だけはかろうじて回避してきました。

数百万年に及ぶ人類史のうちの直近の千年、つまり11世紀から21世紀に至る第2次千年紀はヨーロッパのどこかで戦争が行われていた時代です。西欧キリスト教国連合の十字軍遠征による殺戮、14、15世紀に英仏間で戦われた百年戦争、16世紀のスペイン=オーストリアのハプスブルグ王朝に対するフランス、ブルボン王朝の挑戦、17世紀のヨーロッパ主要国のほとんどを巻き込んだ三十年戦争、18世紀のフランス革命などの内戦に続く19世紀初頭のナポレオン戦争、19世紀末のプロシャとオーストリアの戦いや普仏戦争等々征服を目的とするもの、宗教上の理由による戦争等あらゆる理由で戦争が戦われました。ヨーロッパのこのような好戦性の最終的結果が20世紀に入ってからの両次の世界大戦であったと言えるでしょう。

20世紀までの戦火の歴史は、その時々のいわゆる先進国の利害の対立によって戦争が惹き起こされていることをはっきり物語っています。第二次大戦までの数ある戦争の責任はその時々の先進国にあって、アジア・アフリカやラテン・アメリカの発展途上国にあるわけではありません。個々の戦争の原因にしたところで現在から見れば考えられないような愚かしい理由で戦われている場合が少なくありません。いかなる時代においても教育が必要な所以です。現代でも同じことが言えます。人間は歴史から何も学んでいないと言えるのかもしれません。結局のところ、人間を戦争にかきたてるのは宗教的理由でも異質な文化との軋轢でもなく、ただただ経済的理由であるのかもしれません。

第二次世界大戦終結後70年あまり、国連などの国際機関は種々の機能不全をあげられながらも先進国どうしの全面的交戦はありませんでした。その意味では先進国における広義の教育の効果もあり、国連は何とか機能してきたと言えるでしょう。70年も国と国との全面的交戦がないというのは近代国家成立以来、稀有のことです。とはいえ第二次大戦後の70年がそれ以前より平和な時代であったわけではありません。単に国と国との全面的武力紛争がなかったというだけで、紛争の種はいろいろあり、これまでにはなかった類の紛争も登場しました。

まだ15年しかたっていない21世紀も、2001年9月11日の米国における史上最大規模のテロ事件以来、数々のテロ事件を経験しています。9.11事件の報復として米国はアフガニスタン、イラクへの軍事介入を行いましたが、その結果テロ行為が抑止されたという兆候はなく、むしろヨーロッパを中心にテロ行為が拡散しています。つまりテロに対する武力報復はさらなるテロを招くことはあっても抑止力とはならないことをこの数年の経過は如実に示しています。そしてこうしたテロ行為への参加者が若い世代であることを思うとき、若人への教育、正しいメッセージの発信が必要不可欠であることが実感されます。

加えて我が国は21世紀にはいってから、未曾有の被害をもたらした自然災害、東日本大震災と、それに伴う大規模な原発事故を体験しています。経済的利潤追求を優先して科学技術の成果の利用を急ぐあまり、現代の人々だけでなく未来の世代にも大変な負担をかけてしまうという実例を持っているのです。

過去においても人類の恒久平和達成のための様々な努力がなされてきました。今こそ、賢人達の努力を継承しつつ21世紀の恒久平和達成のために新しい知恵を出し合っていかねばならないと考えます。20世紀まで人間の歴史をリードしてきた西欧文明だけに依拠するのではなく、文化の多様性を尊重し、国民国家の枠組みを越えて偏狭なナショナリズムを克服し、科学技術の発展と人間社会への真の寄与を目指す若人の人材育成を願い、別に定める本フォーラム定款に則った諸活動を遂行するために、国際21世紀懇話会の設立を図りたく、多数の方々のご賛同をお願いしたい次第です。

          2016年9月

 発起人代表

磯村尚徳(元パリ日本文化会館館長)

発起人
青井紀子(国文学者)
青栁正規(前文化庁長官)
大滝則忠(前国立国会図書館長)
大貫恵美子(ウィスコンシン大学教授)
大山礼子(駒澤大学法学部教授)
川本恒彦(グリーンクロス・ジャパン代表)
中村仁(元中央公論新社社長)
吉野源太郎(元日経新聞論説委員)
松本慎二(幹事代表)

幹事(予定)
松本慎二(元ユネスコ企画官)
朝田健治(サイバー大学教授)
澤井進(学情研常務理事)
金森紀博(日本教育クラウド推進協議会事務局長)

One response to “国際21世紀懇話会(Global Forum for Twenty-first Century) 設立のお知らせ”

  1. 山元順雄 より:

    ウィーンで UNIDO OBOR 会議の席で 受け取りました。御世話になりました 遅ればせながら やっと緒に就いた感じです。
    参加いたします。

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